@article{oai:kusw.repo.nii.ac.jp:00000317, author = {岩間, 文雄}, issue = {2}, journal = {関西福祉大学研究紀要, The Journal of Kansai University of Social Welfare}, month = {Mar}, note = {西暦2000年を迎えた今日、我が国では様々な人間援助の専門職が存在する。伝統的な専門職の典型例である医師、看護職、ますますその活躍が期待される社会福祉士、介護福祉士。超高齢化社会を支えるため各地で養成が盛んなホームヘルパー、介護保険に関連した介護支援専門員、精神障害者への福祉的援助の担い手として期待される精神保健福祉士など、枚挙にいとまがない。時代とともに様々な環境的要因から家族や地域社会がその成員をサポートする力や問題を解決する力が減退し、同時に人々が直面する社会生活上の問題が多様化・複雑化するなか、それに対処する専門職が必要とされるのは必然といえる。 他方、セルフヘルプ・グループと呼ばれる援助の媒体が注目されている。精神障害者の家族会、アルコホーリクス・アノニマス、断酒会など、困難に直面した個人が、同じ経験を共有する仲間達と個人的な要請において発足させる集団である。日本におけるその実数や実像を正確に把握する統計資料はない。それらは基本的に公的な資金で運営されているわけでもないし、社会福祉法人などの公的な主体が設立したものでもない。そのため、活動や実像はマスコミによる報道、グループが取り扱う問題に関係する専門職からの情報提供、研究者の調査、参加者自身の声やそれを伝える書籍などの情報から部分的な把握が可能なのみであるため、日本におけるセルフヘルプ・グループ数の年次増加率などは明らかにしようもない。それでも、前記の媒体から得られる情報は、現代社会の保健・医療・福祉分野におけるケア・システムにおいて、セルフヘルプ・グループが非常に重要であるとみなされるようになってきたことを伝えている。 社会的な要請をうけて公的に育成され、科学的な知識基盤を持ち、客観的立場から対象者を援助する専門職と、個人的要請によって問題をめぐる経験をもとに組織され、主観的で情緒的な相互援助を展開するセルフヘルプ・グループ、この2者はあらゆる局面で異なっている。しかし、保健・医療・福祉分野の専門職達が取り組む問題、例えば嗜癖、難病、身体障害、精神障害、ライフスタイルの変化、虐待、家族の介護といった、その同一の問題を巡って多くのセルフヘルプ・グループが組織され活動している。必然的に、両者の関係性、あるいはもっと踏み込んで専門職によるセルフヘルプ・グループへの支援はいかにあるべきかというテーマは常に重大な関心であり議論が重ねられてきた。 セルフヘルプ研究にあたっては、久保紘章・石川到覚編『セルフヘルプ・グループの理論と実際』において指摘されているように「セルフヘルプ・グループを考える場合、セルフヘルプ・グループそれ自体とセルフヘルプ・グループへのサポートを区別しておく必要がある。」と考えられるので、本論での基本的な視点を明らかにしておくべきであるように思われる。ここでは後者のテーマを深めることに焦点を置いている。また、本論で論じる「セルフヘルプ・グループへの支援」は、個別の専門職(主にソーシャルワーカーを想定している)とセルフヘルプ・グループとの関係の中でなされる可能性のある活動と限定するもので、セルフヘルプ運動を発展させるために有効なあらゆる支援を考えるのではない。これは、個々の専門職が実践の場で出会うセルフヘルプグループと不毛な摩擦を起こしたりセルフヘルプ・グループを傷つけたりすることを避け、可能な限り豊かで実りある協働関係を結ぶのに少しでも資するような提案ができないかという問題意識を本研究の出発点としているためである。 アプローチとしてはまず、セルフヘルプ・グループと専門職の関係、及び専門職によるセルフヘルプグループの支援に関連する文献を概観し、そこに見られる問題点と可能性、論調の変化等について整理することから始める。また、文献における論点の整理から得られたアイディアを基に、両者の関係性に影響を与える要素について考える。}, pages = {141--154}, title = {セルフヘルプ・グループと専門職の協働のために}, year = {2000} }